LOGIN息を吐くように簡単に嘘を重ねることができて…… 浮気のハードルが極端に低くなっている…… 夫が言ってきた女とは別れるという言葉の何と軽いことか。 だが、口にした手前また以前と同じように家に帰って来るようには なった。 反省の色も……そして言葉もなかったけれど。 夫のいる景色は霞んで見える。 夫? この|男《こいつ》が私の人生のパートナー? ンなわけないよね? だけど夫なの? この人、誰なんだろう? 私にとって誰ナンだろう? 夫といるとイライラしてしまう。 それなりの会話はするけれど、以前のような親密さは 持てるはずもなく、息苦しささえ感じてしまう。 こんなあからさまに嫌悪感の混じった感情を持つことは 初めてかもしれない。 不安や悲しみだったり、悔しさだったり、怒りだったり そんな感情は経験していたけれど、吐き気を催すほどの嫌悪感は 初めてのことで自分でも驚いている。 だから夫の前で普通に見えるよう、取り繕うのが大変。 けれど、夫の家に帰ってくる頻度が増えてほっとしている自分がいるのも 確かで……人間ってつくづく矛盾を孕んでるものなんだなぁ~って自己分析 したりしていたある日のこと。 ◇ ◇ ◇ ◇ 自宅に仲間友紀がやって来た。「私、お店でバイトしている仲間と言います。 オーナーの奥さんでしょうか? 」「ええ、そうですが」 「大事なお話があって、それで何とかこちらの住所を 調べて尋ねてきました。 え~と、お時間いただいてもいいでしょうか? 」 「分かりました。 ここではなんですから、近くにあるお店でどうでしょう? 」 私は産休と育休中はもっぱらお家ごはんがメインなので……というか、 勤めてる時はお弁当か病院内の食堂もしくは近くの食堂で食べたりと いうことはあったけど、家の近所でほとんど外食したことがなかったので、 ちょっと焦ってしまった。 さりとて彼女をうちに上げてリビングでなんてとてもじゃないけれど…… 有り得ないし、何となく普段道すがら目にしていた店に彼女を連れて行った。
夫と小娘にはもちろんのこと、自分自身にも嫌気が差してしばらく毎日を過ごす日々。 クリスマスに斉藤さんと会ってから早いものでもう2ヶ月が過ぎようとしていた。 娘も後1ヶ月半で3才を迎える。 本当なら可愛い盛りの子を夫婦で愛でて最高に幸せを味わって過ごせる時節なのにもったいないよね、私も夫も。 悲しさや悔しさに負けてグタグタになることもあるけど愛しい娘の可愛い盛りのこの時期を大切にしなきゃって改めて心に誓った。 娘にはどんなにか慰められてきたかしれない。 私は思う……。 ちょっと振り向けば娘を授かった幸せがあってその幸福を享受できるというのに。 真っ当な道から横道にそれて、快楽に流されてしまった夫。 夫は全然娘に執着してないし、愛情もあるのかないのか分からない。 最近は家にほとんど寄りつかず、気持ちも完全に外へ向いているため、彼の娘への愛情は、もはや量りようがない。 今は私のことはもちろんのこと、娘のことさえ眼中にないのだろう。 そんなだから、娘が存在することの有難さも幸せも見えてはいないはず。 こんな夫にいつか娘の存在の大きさ、大切さに気付く日が来るのだろうか! この想いが私の中から中から……溢れてくる。 放り出した家族がいつまでも自分を慕い続けてくれるなんておとぎ話のようなこと考えてないよね? こんな家庭必要? ここ最近 毎日のように……呪文のように……私は自分に問いかけている。 だけど、娘といる時はなるべく忘れるように努めて娘を慈しみ見守るように過ごしてもいる。 言葉数も増えてかわいいんだぁ~。 母もしょっちゅう、子守を買って出てくれる。 実家の側で家を構えてくれたことだけは夫に感謝だね。 だけど、後はぜ――んぶ、グタグダのボロボロだよ。 思い起こせば、海外へ行ったことが夫の性に対する考え方を大きく根本から変えてしまったのかもしれない。 伴侶になる人の職場環境は、家庭に入った妻にとってすごく重要なのだと考えさせられるものがある。 山奥で働く男たちをTVで見ていてしみじみとそう思った。 コンビニなんかとは無縁でおやつやおにぎりを買うこともできない山深い場所で木を切る男たち。 仕事っぷりがかっこいいっ。 『きゃぁ、すてきっ!』 (口に出てたよっ) 彼らが口にでき
「何? ないな。 ……って俺のすることに一々文句つけんな! 」「いつものお決まりのパターンなのね」 ヤツは逆ギレしやがった。「文句って、まだ言ってません。 ……ってところを見ると自覚はあるのね。 また若い子と浮気してたね。 ちゃんとして! あなたは既婚者で私の夫で碧の父親でしょ? バイトの女にはヤメてもらいます。 仕事もしないであなたの性処理が仕事だなんて一体どういうことなの? そもそも今そんなことしている状況じゃないでしょうに。 このままじゃ、早晩店はやっていけなくなるわね。 一生懸命やってもなかなかお店の運営なんて大変なことなのに、オーナー自ら仕事さぼって何やってんだか」「働いてもないお前が店のことに口挟む権利はないよ、フフン」「じゃぁお店を潰す前に、借金だけが残る前に私の200万円、返してちょうだい。 それとあの女に慰謝料請求するわよ。 前の女と違って日本に住んでる人間だからどこまでも追いかけて回収してやる」 「分かった、分かったってぇ。 あいつだって婚約者いるんだし、俺とは遊びだよ。 俺も果歩と離婚する気ないしな。ただの軽いストレス発散の遊びなんだから、そう目くじらたてんなって」「婚約者ぁ~! あの子まだ10代くらいじゃないの?」「ああ見えて22才だよ。 親戚筋の幼馴染がいて、そいつが婚約者らしい。 結婚間近だし、結婚したらうちのバイトも止めてその婚約者の実家の近くに家を構えるらしい。 俺たち後腐れのない関係ってわーけ! 」「信じらんないっ、あなたたち。 婚約者や私のことを何だと思ってるの」「もうそろそろ別れ時だし、うんっ……別れるよ、別れるから。 この話しはもう終わりにしようぜ。腹減ったしぃ~ 飯にしよう」 ギィ~ グヤジィ~っていうのが私の本音だった。 私は何故まだこんな男と一緒にいるの? しがみついているの? こんな自分にも腹が立ってしようがなかった。。
あれこれ考えている間に、いつもより早く夫が帰ってきてしまった。 ◇ ◇ ◇ ◇ 男子学生の菅田《すだ》が帰りがけにボソッと囁いてきた。 『奥さん? と名乗る女性《ひと》が来てました』 それは報告という名の言い方とは違っていた。 言うか言うまいか迷ったけど一応言っときますわ、というような、どうでもいいような言い方に聞こえた。 なんだよ、あいつ。 俺が奥の部屋から出て来て、仲間を帰してから今のいままで2時間もあって、客足も無くなって話す機会はあったのに、帰り際にぽそりと大事なことを話しやがる。 何か知らないが、大人しいのが取り柄だと思っていたのにボソッと呟いただけ、のような報告に棘が感じられたのだ。 あんな大人しいのが案外怒らすとトンでもなく怒り狂って発狂して暴力的になるのかもなぁ~なんてそんな思考に走っていたが、おぉ何てこったい、俺のマヌケ! 果歩はいつ来たんだ? 誰も俺に声かけてないだろ? 奥の部屋にいたのに誰も声をかけてなくて……だけど菅田《すだ》は果歩にきっと俺の居場所を聞かれて正直に奥の部屋にいると言ったはずだ。 見られたのか? 俺たちの痴態を。 ヤバイ、やばいぞぉ~これは、 ヤバイヤバイ。 見られたとしてどの辺りを見られたのか。 俺は脳内をフル稼働して仲間友紀との痴態の初めから記憶を呼び戻し、知らず知らず言い訳のできるシーンを捜していた。 ガクッ、俺たちふたりの行為に言い訳のできるようなシーンは見当たらない……か。 しかし、なんだよ、怖いものなしの俺様なんだから落ち着けぇ~。 果歩が怒っても泣いてもほうっておけばいいだけだ。 いい加減浮気ぐらいって、免疫つけてもいい頃だろ? 俺とは何だかんだ言いながら別れられないんだから。 ◇ ◇ ◇ ◇「ただいま」「お帰りなさい。今日お店に行ったわ」「……らしいね」 やっぱり男子学生、夫に報告してたんだ。 じゃあ、夫は浮気の現場を見られたって知ってるよね? 「私に何か言うことはないの? 」
ちょうど上手い具合に客がパラパラと立て続けに3人入って来るのが 視界に入った。 それで私の腹が決まった。 客と男子店員を横目に、私はそう~っと細心の注意を払って 奥へと歩を進めた。 もちろん録画と録音の準備は怠らなかった。 そんな私の目に飛込んできたシーンとは? 真っ裸で……オット、 違った……。 正確には互いの下半身だけをむき出しにしてシックスナインに没頭 している2人の姿があった。 互いの股間に顔を埋め、その行為に没頭している。 ドラマやネット上の話だと、ここで「テメェらここで何やってんだ」と 怒鳴り込むところだろう。 ◇ ◇ ◇ ◇ いくら現場を見るかもと思って心の準備はしていたとはいうものの、 よもやこの時ここでシックスナインとは……。 驚きと憤怒のあまり私は何もできず、気付かれずにそっと後ずさり してカウンターに戻るのがやっとだった。 男子店員は接客をちょうど終えたところだった。 彼には『ふたりは取り込み中で忙しいみたいだから、私は これで帰ります』とだけ告げて、そそくさと店を出た。 男子店員は私が来たことを夫に報告するだろうか? 奥の部屋に入ったことまで言うだろうか? あいつは反省もなく又やらかしてた。 帰り道の途上、気がつくと『畜生畜生……あんなヤツ 地獄に落ちればいい』と呟いていた。 歩きながらあるお店のガラス張りの壁の中に自分の顔を見た。 なんか、やだなぁ~何この今の自分の顔。 何もかもが絶望的だった。 気が動転して何もできずにいたと思っていたのに 実際は、しっかりと録画のボタンを押していた。 私ってGJ! Yeah! そんな小さく雄叫びをあげたのは、自宅の居間で撮れたデジカメを 確認して、ふたりの現場がガッツリ撮れていたのを確認した後のこと。 『ひゃっほぉーいっ!』 言葉とは裏腹に心では泣いていた。 その日、夫をどんな顔で迎えればいいのやら、私は途方に暮れた。 理由をつけて実家に帰ろうか。
斉藤さんが店を辞めてからは、毎日でも店をcheckしてやるぅと息巻いて3日続けて1人で店の様子を見に行った。 彼らがふたりでいるか、各々ひとりでいるか。 当然といえば当然だよね。 必ずひとりは店にいないといけないわけだから、ニャンニャンしている時間はない。 あ~あ、私ってアホだなぁ~って3日めに虚しくなった。 はぁ~、何やってんだろう、私。 ……とは言え、なんとかして夫の浮気の証拠を掴みたくてしょうがなかった。 うやむやの状態で過ごす日々は頭と心がどうにかなりそうだった。 そして、この頃夫は仮眠を店の倉庫でとったりするようになり、家に帰る頻度が減っていった。 荷物が増えてどうしても倉庫が使えない時に、家で仮眠をとるような生活だ。 何か、イラついているのが分かる。 私には分かる……分かってしまう。 斉藤さんがいなくなって人手が足りず、仲間とニャンニャンするお楽しみができなくなったからに違いない。 ストレスだな。 しかしなぁ~、妻の私とできなくてストレスっていうわけじゃなくて、若い女の子とできなくてストレスってなんなのよ全く。『バカにしてンじゃないぞ、ゴラァ』……と心で罵倒しながら反面、私はものすごく虚しさを感じてもいる。 はぁぁ~、ため息が出てしようがないわ。 何かぁ、なんかぁ、とにかく動かないかなぁ、今の停滞している状態が動いてくれないかなぁ、そんな風に考えてそのあとを過ごした。 そして、もうホントにあぁぁぁぁぁぁとストレスマックスになった日、私はまた娘を母に預けて店に走った。 例によって店の中の様子を伺った。 気がつくと私は、よっしゃぁ~ってガッツポーズしてた。 私は……わたしが待ち望んでいた光景を見た。 待ってたよ、こういうのを。 ずっとずっと待ってた。 私が見た店の中には、高校生なのか……はたまた大学生なのか、定かではないが男子学生がポツンとひとり居た。 線の細いイメージを受けたけれど、そこは男の子、細マッチョみたいで力仕事にも問題なさそう。 オーナーもいないのに一生懸命品揃えしている。 真面目そうな男子《こ》でよかった。 私は感心して彼の働く様子をしばらく眺めていた。 しかし、大した売り上げという成果を出せていないのにも関わらず、もうひとりバイトを入れ